ワイマラナーが飼いにくい8つの理由｜後悔しない飼育法を解説

ワイマラナーが飼いにくいとされる8つの理由

極めて高い運動量の必要性

ワイマラナーは狩猟犬として改良された犬種であり、その運動量は一般的な犬種とは比較にならないほど多いことが特徴です。1日最低2時間以上の運動が必要とされ、散歩だけでは不十分です。ドッグランでの全力疾走、ボール遊び、フリスビーなどの激しい運動を日常的に取り入れる必要があります。

運動不足の状態が続くと、ワイマラナーは問題行動を起こしやすくなります。具体的には、家具の破壊、過度な吠え、無駄掘り、攻撃的な態度などが現れることがあります。これらは単なる「いたずら」ではなく、エネルギーの発散場所を失った結果であり、犬自身もストレスを抱えている状態です。

また、ワイマラナーは単なる肉体的運動だけでなく、精神的な刺激も求める犬種です。知育玩具を使ったゲームや、新しいトリックの習得など、頭を使う活動も日常的に取り入れることが重要です。この点で、仕事で忙しい飼い主や、体力に自信のない方には飼育が難しいと言えます。

犬種	1日の必要運動時間	運動の強度
ワイマラナー	2時間以上	高強度（全力疾走必須）
ゴールデンレトリバー	1.5時間程度	中〜高強度
柴犬	1時間程度	中強度
トイプードル	30分程度	低〜中強度

この表からも分かるように、ワイマラナーの運動必要量は他の人気犬種と比べても圧倒的に多いです。毎日2時間以上の運動時間を確保できるかどうかは、ワイマラナーを飼う前に慎重に検討すべき重要なポイントです。

分離不安になりやすい性質

ワイマラナーは「ベルクロ・ドッグ（マジックテープ犬）」という別名を持つほど、飼い主に密着する傾向が強い犬種です。常に飼い主のそばにいたがり、一人で過ごすことが苦手です。この特性は、飼い主との強い絆を築ける反面、分離不安症のリスクも高めます。

分離不安症とは、飼い主が不在の際に過度なストレスを感じ、問題行動を起こす心理状態です。ワイマラナーの場合、以下のような症状が現れることがあります。

分離不安を予防するには、子犬期からの段階的なトレーニングが重要です。最初は数分の短い留守番から始め、徐々に時間を延ばしていく方法が効果的です。また、出かける前に大げさな別れの挨拶をしないことも重要なポイントです。飼い主が出かけることを「特別なイベント」にしないことで、犬の不安を軽減できます。

しかし、ワイマラナーの場合、適切なトレーニングを行っても長時間の留守番は困難なケースが多いです。毎日8時間以上家を空ける生活スタイルの方には、ワイマラナーの飼育はおすすめできません。詳しい留守番対策については、犬の留守番ケージ対策の記事や留守番中の排泄問題の記事もご参照ください。

強い狩猟本能と制御の難しさ

ワイマラナーは元々大型獣猟犬として育種された犬種であり、狩猟本能が非常に強い特徴があります。この本能は、現代の家庭犬として飼育される場合でも色濃く残っており、適切な管理とトレーニングなしには制御が困難です。

具体的には、小動物を追いかける衝動が非常に強く、猫、リス、鳥、ウサギなどを見つけると、瞬時に追跡行動に移ります。この際、飼い主の呼びかけも耳に入らないほど集中してしまうことがあり、リードなしでの散歩は極めて危険です。実際に、他のペットを追いかけて事故につながるケースや、迷子になってしまうケースも報告されています。

また、ワイマラナーは視覚的な刺激に敏感で、動くものに対して本能的に反応します。自転車、ジョギング中の人、走る子どもなども追いかける対象となり得ます。このため、公共の場での制御が非常に重要です。詳しい社会化トレーニングの方法については、犬の社会化トレーニング記事をご参照ください。

狩猟本能は、単に「しつけが甘い」という問題ではなく、犬種特性として深く根付いた本能です。完全に消すことはできないため、飼い主は常に警戒し、適切な管理を行う必要があります。この点で、ワイマラナーは初心者や小さな子どものいる家庭には向かない犬種と言えます。

繊細で神経質な気質

ワイマラナーは外見の優雅さとは裏腹に、非常に繊細で神経質な一面を持つ犬種です。大型犬としての体格と力を持ちながら、精神的には敏感で、環境の変化やストレスに弱い傾向があります。

この繊細さは、以下のような場面で問題となることがあります。

特に雷恐怖症はワイマラナーに多く見られる問題です。雷の音を聞くと、震える、隠れる、パニックになって逃げ出そうとするなどの行動を示します。この恐怖は単なる「怖がり」ではなく、本能的な恐怖反応であり、適切な対処が必要です。

また、ワイマラナーは飼い主の感情を敏感に読み取る能力が高いため、飼い主自身が安定した精神状態を保つことも重要です。飼い主が不安やストレスを抱えていると、犬もそれを感じ取り、不安定な行動を示すことがあります。

しつけの難易度が高い

ワイマラナーは知能が高い犬種として知られていますが、それが必ずしも「しつけがしやすい」ことを意味するわけではありません。むしろ、独立心が強く、頑固な面もあるため、しつけには高度な技術と忍耐が求められます。

ワイマラナーは自分で考えて行動することを好む犬種です。これは狩猟犬としての特性であり、単純な服従訓練だけでは不十分です。飼い主がリーダーシップを発揮し、一貫性のあるルールを示すことが極めて重要です。

特に無駄吠えはワイマラナーの飼い主が直面しやすい問題です。警戒心が強く、見知らぬ音や人に対して吠えることがあります。この行動は、適切なトレーニングで改善できますが、時間と根気が必要です。詳しい対策は犬の無駄吠え対策記事をご参照ください。

しつけ項目	難易度	ポイント
トイレトレーニング	中	一貫したタイミングで行う
基本コマンド（座れ・待て）	中	短時間で集中して教える
呼び戻し	高	狩猟本能が強く、集中力が途切れやすい
無駄吠え防止	高	警戒心が強く、継続的なトレーニングが必要
留守番トレーニング	非常に高	分離不安のリスクが高い

また、ワイマラナーは退屈すると問題行動を起こしやすいため、単純な服従訓練だけでなく、頭を使う遊びやトリック訓練も取り入れることが効果的です。知育玩具を使った遊びや、ノーズワーク（嗅覚を使った探索ゲーム)なども、ワイマラナーの精神的刺激として有効です。

大型犬ゆえの飼育コストの高さ

ワイマラナーは大型犬であるため、飼育にかかる費用も相応に高額です。年間50万円以上の飼育費用を見込む必要があり、これは小型犬の2〜3倍に相当します。経済的な余裕がない場合、ワイマラナーの飼育は困難です。

特に食費は大きな負担です。ワイマラナーは活発な犬種であり、高品質なドッグフードが必要です。安価なフードでは栄養バランスが不十分で、健康問題につながる可能性があります。以下のような高品質フードがおすすめです。

また、医療費も大きな負担です。大型犬は加齢に伴い、股関節形成不全や胃捻転などの疾患リスクが高まります。手術が必要になった場合、数十万円〜100万円以上の費用がかかることもあります。ペット保険に加入することで一部の費用は補償されますが、保険料自体も大型犬は高額です。

さらに、ワイマラナーは広い居住空間も必要です。狭いアパートでは運動不足やストレスの原因となります。理想的には、庭付き一戸建てでの飼育が推奨されます。賃貸住宅の場合、大型犬可の物件は限られており、敷金・礼金も高額になる傾向があります。

遺伝性疾患のリスク

ワイマラナーは遺伝的に特定の健康問題を抱えやすい犬種です。主な遺伝性疾患には、股関節形成不全・胃捻転・甲状腺機能低下症などがあります。これらの疾患は、ワイマラナーの生活の質を大きく低下させる可能性があり、飼い主は十分な知識と備えを持つ必要があります。

特に胃捻転はワイマラナーの飼い主が最も警戒すべき疾患です。大型犬で胸が深い犬種に多く見られ、発症から数時間で死亡することもあります。食後すぐの激しい運動を避ける、食事を1日2-3回に分ける、早食いを防止するなどの予防策が重要です。

疾患名	発症リスク	予防・管理方法
股関節形成不全	中〜高	適正体重維持・関節サプリ・過度な運動制限
胃捻転	高	食事回数分割・食後の安静・早食い防止
甲状腺機能低下症	中	定期的な血液検査・早期発見と投薬治療
進行性網膜萎縮症	中	遺伝子検査・繁殖前のスクリーニング

これらの遺伝性疾患を完全に防ぐことはできませんが、信頼できるブリーダーから購入することでリスクを軽減できます。良心的なブリーダーは、親犬の健康診断結果（股関節レントゲン、遺伝子検査など）を開示し、遺伝性疾患のリスクが低い個体のみを繁殖に使用します。

初心者には向かない犬種

ここまで見てきた特徴から明らかなように、ワイマラナーは初心者には不向きな犬種です。高い運動量、繊細な気質、強い狩猟本能、しつけの難しさ、高額な飼育費用など、経験豊富な飼い主でなければ適切に対応できない要素が多数あります。

初めて犬を飼う方がワイマラナーを選んだ場合、以下のような問題に直面する可能性が高いです。

ワイマラナーは、以下のような条件を満たす飼い主に適しています。

初めて犬を飼う方や、ワイマラナーの特性に自信が持てない方は、より飼いやすい犬種から始めることを強くおすすめします。ゴールデンレトリバー、ラブラドールレトリバー、ビーグルなどは、初心者にも適した犬種として知られています。詳しくはワイマラナー飼育で後悔しないための注意点もご覧ください。

後悔しないワイマラナーの飼育法

十分な運動とメンタル刺激の提供

ワイマラナーを飼育する上で最も重要なのは、十分な運動量の確保です。前述の通り、1日最低2時間以上の運動が必要ですが、単なる散歩だけでは不十分です。全力疾走できる機会を定期的に提供することが、ワイマラナーの心身の健康維持に不可欠です。

特にメンタル刺激は、肉体的な運動と同じくらい重要です。ワイマラナーは知能が高く、単調な運動だけでは退屈してしまいます。以下のような頭を使う遊びを日常的に取り入れましょう。

運動不足はワイマラナーの最大のストレス源です。十分な運動を提供することで、問題行動の多くは予防できます。また、犬の遠吠えと感情表現についても理解を深めることで、愛犬のニーズをより的確に把握できます。

早期からの社会化トレーニング

ワイマラナーの飼育成功の鍵は、子犬期からの社会化トレーニングにあります。生後8週齢から16週齢は社会化の黄金期と呼ばれ、この時期に様々な経験をさせることで、将来の問題行動を大幅に減らすことができます。

特に他の犬との適切な交流は重要です。ワイマラナーは狩猟本能が強いため、小型犬を「獲物」と認識してしまうリスクがあります。子犬期から様々なサイズの犬と遊ばせ、適切な遊び方を学ばせることが必要です。詳しくは犬の社会化トレーニングガイドをご参照ください。

月齢	社会化トレーニングの重点
8〜12週齢	家族との信頼関係構築・基本的な環境音への慣れ・トイレトレーニング
12〜16週齢	パピークラス参加・様々な人との交流・外出頻度を増やす
4〜6ヶ月	基本コマンド(座れ・待て・来い)・リードトレーニング・ドッグラン体験
6〜12ヶ月	応用コマンド・呼び戻しトレーニング・長時間散歩への移行

また、無駄吠え対策も社会化の一環として重要です。ワイマラナーは警戒心が強く、見知らぬ人や音に対して吠えやすい傾向があります。犬の無駄吠え対策やトイレトレーニング補助スプレーなども活用しながら、総合的なしつけを進めましょう。

適切なドッグフードの選び方

ワイマラナーのような活動的な大型犬には、高品質なドッグフードが不可欠です。安価なフードは穀物や副産物が多く含まれ、必要な栄養素が不足する可能性があります。ワイマラナーの健康を維持するには、以下のような成分バランスのフードを選びましょう。

具体的には、以下のようなプレミアムフードがワイマラナーにおすすめです。これらのフードは、大型犬の健康維持に必要な栄養バランスが整っており、長期的な健康をサポートします。

フードの特徴	メリット	注意点
高タンパク質フード	筋肉維持・活動的な犬に最適	腎臓疾患のある犬には不向き
グレインフリー	消化しやすい・アレルギー対策	価格が高め
関節サポート成分配合	股関節形成不全予防	効果を実感するまで時間がかかる

また、胃捻転予防のため、1日の食事量を2回〜3回に分けて与えることが重要です。食後すぐの激しい運動も避けましょう。早食い防止食器を使用することで、ゆっくり食べる習慣をつけることもおすすめです。

適切なグルーミング

ワイマラナーは短毛種であるため、トリミングの必要はありませんが、日常的なグルーミングは健康維持に不可欠です。週2-3回のブラッシングで抜け毛を除去し、皮膚の健康をチェックすることが重要です。

ワイマラナーの被毛は天然の保護機能を持っており、過度なシャンプーはこの保護機能を損なう可能性があります。月1回程度のシャンプーで十分であり、日常的には週2-3回のブラッシングで清潔さを保つことができます。

特にファーミネーターのような専用ブラシを使用することで、抜け毛を効率的に除去し、皮膚の血行促進にもつながります。ブラッシングは単なる美容ケアではなく、飼い主とワイマラナーのコミュニケーション時間としても重要な役割を果たします。

グルーミングの習慣化は、ワイマラナーの健康維持だけでなく、飼い主との信頼関係構築にも大きく貢献します。日常的なケアを通じて、愛犬の小さな変化にいち早く気づくことができ、病気の早期発見にもつながります。

グルーミング項目	推奨頻度	所要時間
ブラッシング	週2-3回	10-15分
シャンプー	月1回	30-45分
耳掃除	週1回	5-10分
爪切り	月2回	10-15分
歯磨き	毎日	5分

特に耳掃除は、ワイマラナーの垂れ耳という特性上、外耳炎予防に欠かせないケアです。耳の内側を定期的にチェックし、異臭や赤み、黒い耳垢などの異常がないか確認しましょう。異常を発見した場合は、自己判断でケアせず、獣医師に相談することが重要です。

健康管理と定期検診

ワイマラナーは遺伝的に胃捻転・股関節形成不全・甲状腺機能低下症などのリスクを持つ犬種です。これらの疾患は早期発見が予後を大きく左右するため、定期的な健康診断が不可欠です。年1-2回の健康診断では、血液検査・尿検査・レントゲン検査を通じて、目に見えない内臓の異常を早期に発見できます。

特に胃捻転は、ワイマラナーのような大型犬で発症率が高く、発症から数時間で死に至る緊急疾患です。以下のような症状が見られた場合は、すぐに動物病院に連絡してください。

また、股関節形成不全は遺伝的要因が大きい疾患ですが、適切な体重管理と運動制限により、症状の進行を遅らせることが可能です。子犬期から過度なジャンプや階段の上り下りを避け、関節に負担をかけない生活習慣を身につけさせましょう。

検診項目	推奨頻度	目的
健康診断（血液検査含む）	年1-2回	内臓機能の評価・早期疾患発見
股関節レントゲン検査	2歳時・以降2-3年ごと	股関節形成不全の評価
甲状腺ホルモン検査	年1回（5歳以降）	甲状腺機能低下症の早期発見
歯科検診	年1回	歯周病予防・歯石除去
ワクチン接種	年1回	感染症予防
フィラリア予防	月1回（蚊の活動期）	フィラリア症予防

定期検診の費用は、年間3万円〜5万円程度が目安です。ペット保険に加入することで、検診費用の一部が補償される場合もあります。ワイマラナーのような大型犬は、医療費も高額になりやすいため、ペット保険の加入も検討する価値があります。

ワイマラナーの平均寿命は10-12年とされていますが、適切な健康管理により、それ以上長生きする個体も少なくありません。愛犬との時間を少しでも長く、健やかに過ごすためには、日々の観察と定期的な健康診断が不可欠です。

また、万が一の病気や怪我に備えて、かかりつけの動物病院を決めておくことも重要です。夜間や休日に対応してくれる救急動物病院の情報も、事前に調べて控えておきましょう。ワイマラナーのような大型犬は、緊急時の搬送も大変です。車での移動方法や、担架代わりになる大きなタオルなども準備しておくと安心です。

よくある質問（FAQ）

参考文献・情報源