デグーの飼育は本当に難しい?初心者が知るべき理由と対策





近年、デグーの飼育は難しいという声が多く聞かれるようになりました。確かに、ハムスターやウサギと比べて特殊な飼育管理が必要なのは事実です。しかし、適切な知識と準備があれば、初心者でも健康で幸せなデグーとの生活を送ることができます。

本記事では、デグー飼育が困難とされる具体的な理由を詳しく解説し、それぞれの対策方法をご紹介します。これからデグーを迎えようと考えている方、すでに飼育中で悩んでいる方にとって、実用的な情報をお届けいたします。

この記事で分かること

  • デグー飼育が難しい7つの具体的理由
  • 初心者でも成功できる飼育のコツと対策
  • 必要な費用と専門病院の見つけ方
  • 長期飼育で注意すべきポイント

目次

デグーの飼育が難しいと言われる7つの理由

このセクションの内容

  • 温度と湿度の管理が徹底的に必要
  • 糖尿病リスクで食事制限が厳格
  • 専門的な医療費が高額になる
  • 尾抜けや尾切れなど特有のトラブル
  • 脱走防止と安全対策が重要
  • なつくまでに時間がかかる個体差
  • エキゾチック対応病院を探すのが困難

温度と湿度の管理が徹底的に必要

デグーの温度管理に必要な機器

デグーの飼育で最も重要かつ困難とされるのが、温度と湿度の厳格な管理です。南米チリの半砂漠地帯が原産のデグーは、適正温度20~25℃、湿度40~50%という狭い範囲でしか健康を維持できません。

デグーには汗腺がないため、自力での体温調節が困難です。室温が28℃を超えると熱中症のリスクが急激に高まり、35℃を超える環境では命に関わる危険性があります。一方、10℃以下の環境では低体温症を起こす可能性があります。

日本の気候では、夏場はエアコンによる冷房、冬場は適切な暖房設備が必要不可欠です。さらに、24時間365日の温度監視が求められるため、停電時の対策や外出時の管理も考慮しなければなりません。

季節 主な課題 必要な対策 推奨機器
夏季 熱中症リスク 24時間エアコン稼働 エアコン、扇風機、冷却マット
冬季 低体温症リスク 適切な保温 ペット用ヒーター、ひよこ電球
梅雨期 高湿度による皮膚病 除湿対策 除湿機、換気扇
通年 温度変化への対応 監視体制の構築 温湿度計、警報機能付き機器

温度管理の失敗は、デグーの体調不良や最悪の場合は死に直結するため、初心者にとって最も高いハードルとなっています。電気代も年間を通じて相当な負担となることを覚悟する必要があります。

糖尿病リスクで食事制限が厳格

デグーの食事管理の様子

デグーは糖分の代謝能力が非常に低い動物として知られており、糖尿病発症リスクが他の小動物と比較して格段に高いとされています。野生では繊維質の多い植物を主食としているため、家庭での食事管理は極めて重要です。

デグーの食事はチモシー(牧草)を主食とし、デグー専用ペレットを補助食とするのが基本です。果物、野菜、市販のおやつなど、糖分を含む食べ物は一切与えてはいけません。

糖尿病を発症したデグーは、白内障、腎不全、神経障害などの深刻な合併症を引き起こす可能性があります。治療は困難で、多くの場合は進行を遅らせることしかできないため、予防が何より重要です。

食品カテゴリー 与えて良いもの 絶対に避けるべきもの
主食 チモシー1番刈り(無制限)
補助食 デグー専用ペレット(体重の5%) ハムスター用、ウサギ用ペレット
おやつ 乾燥ハーブ(少量) 果物、野菜、市販おやつ全般
水分 新鮮な水(常時) フルーツジュース、牛乳類

また、家族全員が食事制限を理解し、徹底する必要があります。「少しなら大丈夫」という考えが、取り返しのつかない健康被害を招く可能性があるため、初心者には厳格な管理が求められます。

専門的な医療費が高額になる

デグーはエキゾチックアニマルに分類されるため、一般的な犬猫の診療とは異なり、専門的な知識と技術を持つ獣医師による診療が必要です。これにより、医療費は犬猫の診療費と比較して高額になる傾向があります。

エキゾチック動物の診療は自由診療であり、病院によって料金設定が大きく異なります。同じ治療でも病院によって2倍以上の価格差が生じることも珍しくありません。

診療項目 料金相場 備考
初診料 3,000~5,000円 病院によって大きく異なる
健康診断 5,000~15,000円 血液検査込みの場合
歯の治療(不正咬合) 10,000~30,000円 全身麻酔が必要な場合
尾切れ手術 15,000~40,000円 入院費別途
入院費(1日) 3,000~5,000円 集中管理が必要な場合はさらに高額

さらに、デグー専用の医療保険は選択肢が限られているのが現状です。アニコムやアイペット保険などの大手でも、デグーは対象外となっているケースが多く、医療費は全額自己負担となることがほとんどです。

年間の医療費として、健康な状態でも予防的診療で3~5万円、病気になった場合は10~30万円程度を見込んでおく必要があります。緊急手術が必要になった場合は、さらに高額な費用が発生する可能性があります。

尾抜けや尾切れなど特有のトラブル

デグーの尻尾の構造説明図

デグーには「尾抜け」「尾切れ」という、他の小動物では見られない特有のトラブルがあります。これは、デグーが野生で捕食者から逃れるために発達させた自切機能が原因で、飼育下でも簡単に発生してしまいます。

デグーの尻尾は骨と皮膚の間に皮下組織がほとんどなく、わずかな力でも皮膚が剥がれてしまいます。一度尾抜けが起こると、骨が露出し、感染症のリスクが高まります。

尾抜けや尾切れの主な原因には以下があります:

  • 捕獲時の不適切な扱い:尻尾を持って捕まえる
  • ケージ内での事故:回し車や金網に挟まる
  • 多頭飼育での喧嘩:他個体に噛まれる
  • ストレスによる自傷行為:過度のストレス環境
  • 脱走時の事故:家具の隙間に挟まる

治療方法は症状の程度により異なりますが、軽度の場合は消毒と経過観察、重度の場合は外科的切断が必要になることもあります。手術費用は15,000~40,000円程度で、術後の管理も長期間必要です。

予防策として、デグーを扱う際は必ず胴体を両手で包み込むように持つ、ケージ内の危険箇所をチェックする、適切なストレス管理を行うことが重要です。

脱走防止と安全対策が重要

デグーの脱走防止対策

デグーは非常に賢く学習能力が高い動物であるため、ケージの仕組みを覚えて脱走を試みることがあります。また、ジャンプ力と登攀能力に優れているため、一度脱走すると捕獲が困難になります。

家庭内での脱走は、デグーにとって多くの危険をもたらします:

危険要因 具体的リスク 対策方法
電気コード 感電、火災 コードカバーの設置、配線整理
小さな隙間 挟まり事故、尾切れ 隙間の封鎖、家具配置の見直し
有毒植物 中毒症状 観葉植物の撤去、高所への移動
他のペット 攻撃による外傷 別室での隔離、監視体制
高所からの落下 骨折、内臓損傷 危険箇所へのアクセス制限

デグーは齧歯類特有の齧る習性があり、家具、壁紙、本などを損傷させる可能性があります。また、誤飲による腸閉塞のリスクも高いため、小さな物品の管理も重要です。

脱走防止の基本対策:

  • 適切なケージ選択:デグー専用または小動物用の頑丈なケージ
  • 二重ロック機構:ケージ扉の確実な施錠
  • 部屋の安全確認:散歩前の危険箇所チェック
  • 監視体制:ケージ外活動中の常時監視
  • 緊急時対応:脱走時の捕獲方法の事前準備

なつくまでに時間がかかる個体差

デグーとのコミュニケーションの様子

デグーは個体差が非常に大きい動物で、人懐っこい性格の個体から極度に神経質な個体まで幅広い性格を持っています。そのため、「デグーは人懐っこい」という一般的な情報を期待して飼育を始めると、現実とのギャップに悩まされることがあります。

懐きやすい個体の場合でも、信頼関係の構築には最低でも3~6ヶ月程度の時間が必要です。神経質な個体の場合は、1年以上かかることも珍しくありません。

個体差に影響する主な要因:

要因 影響 対応方法
遺伝的性格 基本的な警戒心の強さ 個体の性格を受け入れる
早期の社会化経験 人間への慣れやすさ 幼体期からの適切な接触
過去のトラウマ 人間への恐怖心 時間をかけた慎重なアプローチ
環境ストレス 警戒心の増大 安定した飼育環境の提供

信頼関係構築のプロセスは以下のような段階を踏みます:

  1. 環境適応期(1~2週間):新しい環境に慣れるまでは最小限の接触に留める
  2. 声かけ期(2~4週間):ケージ越しに優しく話しかけ、存在に慣れさせる
  3. おやつ期(1~2ヶ月):手からおやつを与え、良い印象を植え付ける
  4. 接触期(2~4ヶ月):軽いタッチから始めて徐々に接触時間を延ばす
  5. 信頼関係確立期(6ヶ月~):自然な接触と相互のコミュニケーション

重要なのはデグーのペースに合わせることです。無理に触ろうとしたり、大きな音を立てたりすると、信頼関係構築が大幅に遅れる可能性があります。

エキゾチック対応病院を探すのが困難

エキゾチック動物病院の検索

デグーの診療が可能な動物病院は、全国の動物病院の中でも限られているのが現状です。特に地方部では、適切な診療を受けられる病院を見つけることが非常に困難で、車で数時間移動しなければならないケースも珍しくありません。

デグーの診療経験がない獣医師による治療は、誤診や不適切な治療により症状を悪化させるリスクがあります。必ずエキゾチックアニマルの診療実績がある病院を選ぶことが重要です。

エキゾチック対応病院が少ない理由:

  • 専門知識の習得困難:大学での教育機会が限定的
  • 診療経験の蓄積不足:症例数が少なく経験値が上がりにくい
  • 専用設備の必要性:小型動物用の医療機器が必要
  • 採算性の問題:患者数が少なく経営的メリットが低い
  • 継続的な学習負担:最新情報の取得が困難
地域区分 対応病院数の目安 主な課題
首都圏 比較的多い(20~30施設) 予約が取りにくい、高額
関西圏 中程度(10~15施設) 病院によって技術差がある
地方中核都市 少ない(2~5施設) 専門性にばらつきがある
地方部・郊外 非常に少ない(0~2施設) 長距離移動が必要

適切な病院を見つけるための方法:

  • エキゾチック専門病院検索サイトの活用
  • デグー飼育者コミュニティでの情報収集
  • ペットショップでの病院紹介
  • 動物病院への直接問い合わせ
  • セカンドオピニオンの確保

緊急時に備えて、複数の病院の連絡先を確保しておくことも重要です。また、夜間や休日の緊急診療に対応している病院は更に限られるため、事前の準備が欠かせません。

初心者でもできるデグー飼育を成功させるコツ

このセクションの内容

  • 適切な飼育環境を整備する方法
  • 健康管理と病気予防のポイント
  • コミュニケーションで信頼関係を構築
  • 長期飼育で注意すべき事項

適切な飼育環境を整備する方法

デグー飼育の成功は、適切な環境整備から始まります。初期投資は必要ですが、一度整備すれば長期間安定した飼育が可能になります。妥協せずに最適な環境を作ることが、結果的にコストを抑えることにつながります。

環境整備の基本原則は「安全性」「快適性」「管理のしやすさ」の3つです。デグーのストレスを最小限に抑えながら、飼い主の負担も軽減する環境を目指しましょう。

必須設備とその選び方:

設備 推奨仕様 価格目安 重要度
ケージ 幅80cm×奥行50cm×高さ60cm以上 15,000~30,000円 最重要
温湿度計 デジタル式、アラーム機能付き 3,000~8,000円 最重要
回し車 直径25cm以上、静音タイプ 3,000~6,000円 重要
砂浴び容器 深型、飛び散り防止機能 2,000~4,000円 重要
給水ボトル 漏れ防止、容量300ml以上 1,500~3,000円 重要

環境管理のポイント:

  • 設置場所の選定:直射日光を避け、風通しの良い場所
  • 温度の安定化:エアコンによる24時間管理
  • 湿度コントロール:除湿機や加湿器の適切な使用
  • 照明管理:自然なリズムを保つための明暗サイクル
  • 騒音対策:静かな環境での設置

初期費用として5~8万円程度を見込んでおきましょう。高品質な設備を選ぶことで、故障による買い替えコストや、デグーの健康被害を防ぐことができます。

環境整備の段階的アプローチ:

  1. 基本設備の設置:ケージ、温湿度管理機器
  2. 安全対策の実施:危険箇所の除去、脱走防止策
  3. 快適性の向上:おもちゃ、隠れ家の追加
  4. 管理システムの確立:日常ケアのルーティン化

健康管理と病気予防のポイント

デグーの健康チェックの様子

デグーの健康管理は「予防が最も重要」という考え方に基づいて行います。病気になってからの治療は困難で高額なため、日常的な予防策に重点を置いた管理が必要です。

毎日の健康チェックを習慣化することで、病気の早期発見・早期対応が可能になります。わずかな変化も見逃さない観察力を身につけることが大切です。

日常的な健康チェック項目:

チェック項目 正常な状態 異常のサイン 対応
食欲 ペレットを完食、牧草をよく食べる 食べ残し、食べ物への無関心 即座に獣医師に相談
排泄物 固形で適度な湿り気 下痢、便秘、血尿 24時間以内に受診
活動量 活発な動き、好奇心を示す 動きが鈍い、隠れたまま 環境確認後、改善なければ受診
被毛 ツヤがあり、抜け毛が少ない 毛玉、脱毛、フケ 皮膚病の可能性、受診検討
呼吸 静かで規則的 荒い呼吸、咳、くしゃみ 呼吸器疾患の可能性、早急に受診

主要疾患の予防策:

  • 糖尿病予防:厳格な食事管理、定期的な体重測定
  • 不正咬合予防:充分な牧草の提供、かじり木の設置
  • 皮膚病予防:適切な湿度管理、清潔な環境維持
  • 尾抜け予防:正しい扱い方の徹底、ストレス軽減
  • 呼吸器疾患予防:温度管理、粉塵の除去

定期健診のスケジュール:

  • 生後6ヶ月まで:月1回の健診
  • 成体期(6ヶ月~4歳):年2回の健診
  • 高齢期(4歳以降):年3~4回の健診
  • 症状がある場合:即座に受診

コミュニケーションで信頼関係を構築

デグーとの良好な関係づくり

デグーとの信頼関係構築は「忍耐力」と「一貫性」が鍵となります。焦らず、デグーのペースに合わせたアプローチを継続することで、必ず良好な関係を築くことができます。

デグーは非常に記憶力が良い動物です。一度嫌な経験をすると長期間記憶するため、最初のアプローチが特に重要になります。

段階別アプローチ法:

段階 期間目安 主な活動 成功の指標
導入期 1~2週間 環境適応、最小限の接触 餌を正常に食べる、隠れなくなる
慣れ期 2~4週間 声かけ、ケージ越しの交流 人の存在に興味を示す
接近期 1~2ヶ月 手からのおやつ、軽いタッチ 手から食べ物を取る
信頼期 3~6ヶ月 積極的な接触、遊び 撫でられることを受け入れる

効果的なコミュニケーション方法:

  • 声かけの習慣化:毎日同じ時間に優しく話しかける
  • 一貫した行動:家族全員が同じ方法でアプローチする
  • ポジティブな関連付け:おやつと組み合わせた交流
  • ストレスサインの理解:嫌がる時は無理をしない
  • 個体差の尊重:性格に合わせたペース調整

デグーが示すストレスサイン:尻尾を振る、歯ぎしり、体を丸める、急激な動き、鳴き続ける。これらのサインが見られたら、いったん距離を置きましょう。

信頼関係が構築された後の楽しみ:

  • 名前に反応する:呼びかけに対して反応を示す
  • 膝の上でリラックス:安心して体を預ける
  • 遊びに誘う:自分から接触を求めてくる
  • 感情表現:嬉しい時や不満な時の表現が豊かになる

長期飼育で注意すべき事項

高齢デグーのケア

デグーの平均寿命は6~8年ですが、適切なケアにより10年以上生きる個体もいます。長期飼育では年齢に応じたケアの変更が必要で、特に高齢期(4歳以降)のケアが重要になります。

高齢デグーは若い頃とは異なる特別なケアが必要です。活動量の低下、免疫力の低下、慢性疾患のリスク増加などに対応した管理が求められます。

年齢別ケアのポイント:

年齢区分 主な変化 必要なケア 注意すべき疾患
幼体期
(~6ヶ月)
急速な成長 栄養管理、環境適応支援 消化器トラブル、外傷
成体期
(6ヶ月~4歳)
安定した健康状態 標準的な日常ケア 糖尿病、不正咬合
中高齢期
(4~6歳)
活動量の漸減 健診頻度の増加 白内障、関節疾患
高齢期
(6歳~)
各機能の低下 特別な高齢者ケア 腫瘍、心疾患、腎疾患

高齢期の特別ケア:

  • 食事の調整:消化しやすい形状への変更、少量頻回給与
  • 環境の改善:段差の軽減、滑り止めの設置
  • 温度管理の強化:より狭い温度範囲での管理
  • 健診頻度の増加:3~4ヶ月毎の定期検査
  • ストレス軽減:環境変化の最小化

高齢デグーは体調変化が急激に起こることがあります。日常の観察をより注意深く行い、わずかな変化も見逃さないようにしましょう。

長期飼育のための心構え:

  • 経済的準備:医療費の増加に備えた資金計画
  • 時間の確保:より丁寧なケアのための時間配分
  • 知識の更新:最新の飼育情報の継続的学習
  • 支援体制:緊急時に頼れる人・病院の確保
  • 心の準備:いずれ訪れる別れへの覚悟

まとめ:デグー飼育成功の鍵

デグーの飼育は確かに難しい面もありますが、適切な知識と準備があれば初心者でも成功できます。重要なのは以下の4つのポイントです:

  1. 徹底した事前準備:環境整備、病院探し、費用計画
  2. 継続的な学習:デグーに関する正しい知識の習得
  3. 忍耐強いアプローチ:個体差を理解した長期的な関係構築
  4. 予防重視の健康管理:病気になる前の対策を最優先

これらを心がけることで、デグーとの豊かな生活を実現できるでしょう。まずは信頼できるエキゾチック動物病院を見つけることから始めましょう。適切なサポート体制があれば、デグー飼育の難しさも乗り越えることができます。


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